元従業員から見た登山家・栗城史多の生き様と受け継いだ遺志

こんにちは、たまこんにゃくです。

今回は少し衝撃的なニュースが飛び込んできましたので、記事にしてみました。

登山家の栗城史多(くりきのぶかず)が8度目のエベレスト登頂を目指している途中に遺体で発見されたというニュースでした。
標高7400mまで到達していた中で、体調不良での下山途中でした。

なぜこのニュースに衝撃を受けたかといいますと、私は以前この栗城事務所で勤務していたからなのです。
もう辞めて日にちが経つため、活躍はたまに聞くくらいの付き合いになってしまいましたが正直亡くなったというのが信じられません。

35歳というまだ若い年齢で亡くなったことは本当に残念です。
私も彼の夢に共感して仕事を一緒にしたことがあったので、エベレスト登頂はぜひとも完遂して欲しいと思っていましたから。

ただその生き様は多くの人を元気づけ、夢を共有できたでしょう。
私もその一人です。この度は追悼も込めて彼の生き様を振り返りたいと思います。

 

なぜ栗城事務所で働くことになったのか?

当時私は就職活動中の大学4年生でした。

意識が高い(笑)私は就職サークルの運営メンバーを2つ掛け持ちし、さらには企業インターンシップや社長との会食にOB訪問と就職活動を熱心に行っていました。

理由は大手企業で働きたいと思っていたからです。

就職活動に全力で打ち込むために、大学の単位は3年までに全部取り終えていました。

こう書くとすごくうざく感じるでしょ?

そうです、私は大手企業以外は意味がないと思うくらいの大手志向でした。
いい学校を出ていい就職先で働くということこそが理想の将来像だったんです。

今考えると笑っちゃいますけどね。
中小企業にもたくさんいい企業があったのに。

そんなこんなで自分が働きたいと思えるような大手企業3社の最終面接に残りました。
どれか1つは入るだろうとタカを括っていた自分の甘い考えが見事に打ち砕かれ、全て落ちてしまったのです。

それで心が折れてしまって、少しの間就職活動を休んでしまいました。

その時にちょうど朝にゴミ拾いをするボランティア活動をやっている団体があったので、気分転換に参加するようになりました。

何度も参加しているうちに参加者と仲良くなり、ちょうど栗城事務所を辞める人がいたので代わりにどうかという話になったのです。

その時にすっかり心が折れていた私は、その申し出を受けることにしました。
こう書くとなし崩し的なように受け取れますが、そうではありません。

すっかり大手志向の考え方はなくなり、ボランティア活動に多く参加するようになったことから、小さい企業であっても人の役に立つ仕事がしたいと思うようになっていたんです。

栗城さんの山に登ることで挑戦する楽しさや限界を決めつけている人に対する勇気を与える存在になりたいという考えに共感して、一緒に仕事がしてみたいと考えたからなんです。

就職活動が楽に終わらせられるという不純な気持ちが全くなかったかというとそうではありませんが(笑)

まぁ一応面接はありましたけどね。
マネージャーの方とロッテリアでジュース飲みながら行いましたけど(笑)

現在は知りませんが、当時は一般求人では一切募集せず信用のおける人に引き継ぐ形を取っていました。
なのでボランティア活動に熱心にやっていなければこの話はなかったと考えると、これも縁なのかもしれません。

 

事務所での仕事について

ずっと栗城事務所といっていたのですが、正式には「株式会社たお」という会社名でした。

たおの意味はあんまり覚えていませんが、確か中国語の哲学「道(TAO)」から取った社名だったはずです。

株式会社という体裁を取っていましたが、実際は個人事務所です。
現在はどのような形態なのかわかりませんが、私がいた頃は事務員が私一人であとはマネージャー等数人が働いていました。

その中で基本的な事務作業は全て私が担当していました。
マネージャーはほぼ事務所にいないので、一人で作業をして分からなければ電話で聞くという感じになります。

内部事情もあるので細かくは触れませんが、いわゆる一般事務員という括りでは収まらない仕事です。

電気・ガス・水道代を払うところから始める事務員なんてあんまいないでしょ?
いやいたらすみません。

でも新卒の私にはあまり理解できませんでした。

他には電話対応や来客応対等の事務作業、名簿作成やスケジュール管理などを行ってました。
登山に必要な物資の郵送とかですね。

あとはグッズの販売をしていたので、取引先との交渉もしていました。
そして栗城さんは講演会もやっているので、イベント会場の予約や設営に受付も行いました。

まぁなんでもやります。
大きい会社とかでもないので、分業なんてものはありません。

自分で考えて動くというスタンスは、その後転職してからも活かせる経験になったと今でも思います。

 

栗城史多という人について

実際の所、私はそこまで多く栗城さんに会ったことはありません。

いつも山に登ってますし、トレーニングや講演会で全国を飛び回っているからです。

ここでどんな人か説明しておきますと、「日本人初となる世界七大陸最高峰の単独無酸素登頂」を目指している人です。

具体的には
・デナリ(旧マッキンリー)/6194m
・アコンカグア/6959m
・エルブルース/5642m
・キリマンジャロ/5895m
・カルステンツ ピラミッド/4884m
・ビンソンマシフ/4892m
・エベレスト/8848m

が七大陸で最も標高が高い山です。

この内エベレスト以外は全て登頂し、後はエベレストを残すのみとなっていました。
それも何度も挑戦し、8度目にして帰らぬ人となってしまいました。

私が初めて彼に会ったのはどの山だったか定かではないのですが、帰還したところを空港へマネージャーと一緒に迎えに行った時でした。

その時に私は憧れの人に会えて感極まったのか「支えになりたいんです!」とかなんとか言った記憶があります。
そしたらなんと言ったと思いますか?

「今彼女いるの?」です(笑)

なんか拍子抜けしてしまいました。
凄い人に会えるという緊張感が抜けて、なんかチャラい人という印象しか残らなかったです。

山に登るのだって、何か明確な夢や目標があったわけではなく付き合ってた彼女に振られたのがきっかけなんです。
その彼女が登山部で、同じ景色見てみようと思ったからとかそんな理由だった気がします。

でも人間として芯は通っている人でした。
これだけはハッキリいえます。

栗城さんの事をよく知らない人は、エベレストに登ることが目標だと勘違いしている場合が大半です。
もちろん制覇するのが目標ではあります。

でもそれが本当の夢ではないんです。
登っていく過程を含めて夢を共有することが本当の夢でした。彼はそれを「冒険の共有」といっていました。

失敗してもいい、何度もチャレンジすることの楽しさを皆さんに共有したいというのが夢でありました。

大人たちが毎日会社の愚痴を言っている姿を子供達が見て、将来自分たちがなりたい大人の姿だと思えるのか?
そうじゃなく何歳でもいい、挑戦する楽しさを味わっている人こそが子供たちに夢を与えられる。

そういったことを伝えたかったのではないでしょうか。

だからインターネット生中継で登山しているところをリアルタイムで流していたんです。
覚えているのは登山中「ウニ食いて~」って叫んでたところだけですが(笑)

講演の時も色々な人とコラボしていたのを覚えています。

「耕せにっぽん活動」を行っている中村文昭、元月亭方正とTEAM-0というコンビを組んでいたてんつくマン、居酒屋「てっぺん」の創業者の大嶋啓介、スープカレー「奥芝商店」の創業者の奥芝洋介などです。

私も全員と話してみましたが、魅力的な人ばかりでした。
やっぱり奴隷のように働く会社員と違って、みな人生が楽しそうなんですよね。

子供に尊敬される大人というのはこういう存在ではないのか。
栗城さんも含め、夢を与えられる人間の考え方は勉強になりました。

そして私が会社員であることに違和感を覚えたのは、こういった人達との関りがあったからだと思います。

 

まとめ

ひょんなことから、私は貴重な新卒というブランドをこの栗城事務所に捧げてしまったわけです。
それを全く後悔していないかといわれると、はっきりとそうだとは言えない部分があります。

そのまま就職活動を続けて一般的な会社に入っていれば、もしかしたらレールに敷かれた道を定年まで辿っていたでしょう。
それもある種の幸せだったかもしれません。

でも別の生き方を知ってしまった。
自分の人生を会社に託すのではなく、自分の人生を自分で発信するという生き方を。

私が栗城さんの事務所にいたのはたった1年弱です。
でもここで学んだことは今の人生観にも結び付いています。

彼が色んな人から批判を受けていることも知っていました。
本当に無酸素登頂をしているのか?本当に単独登頂なのか?

でもそんなことは今となってはどうでもいいのです。
発信をするという挑戦をしなければ評価も批判もされなんです。

挑戦するという姿勢を最後まで貫き通した彼らしい最後だったのかもしれません。

私もブログという手段を知り、仕事に悩んでいる人に向けて発信をしていきたいと思えるようになりました。
そしていつか人前で講演を行うことが夢となっています。

生き方を変えてくれた栗城さんに感謝を込めて。
そしてご冥福をお祈りいたします。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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